2024年06月05日号

 今週の活動報告です。

 自分の未来が悪い方に転がっていくのではないか、という心配ばかりが心に浮かんで、夜の深い時間になっても苦しい日があります。
 小説を読み、小説を書く、その為に時間を使える事がいつもは至上の喜びだけど、そんな時にはパソコンのディスプレイをオフにして、熱いハーブティーを用意して、ゆきやなぎれいさんの詩集を開きます。
「やさしさが花になるなら」という題のその詩集は、元々母が持っていたもので、実家を出る時に譲ってもらいました。やなせ・たかしさんのイラストが添えられていて、装丁も詩もとても美しい。

 初めてこの詩集を読んだ時の情景をいまだに思い出せます。
 母が昔使っていた部屋で、それだから親戚もお客さんもやって来ない、母が少女だった頃に大切にしていたもので満ちている小さくも温かく、静かな部屋の中で、
 言葉の美しさに心を打たれはしたものの、幼すぎて自分の事とはとらえられませんでした。

 それから何年か経ち、子どもから大人に近づいて、この詩の世界に自分を重ねられるような生き方をしていた頃、
 ただ生きる事で精一杯で、わたしには詩を思い出す暇もありませんでした。

 今、この詩集を開く時、自分が日々書く作品の中で精一杯生きている若者達の姿と、それから、最も必要だった時期にこの詩集を開けないまま激動の青春を過ごしてしまった自分の姿が、そっと心に立ち現れます。